市街地でもツキノワグマ出没 石川で10年ぶり警戒情報 340件超す目撃 

市街地や里山でツキノワグマの出没が相次ぎ、人身事故の危険性が高まっているとして、石川県は8日、2010年以来10年ぶりとなる出没警戒情報を出した。目撃件数は10月6日現在で342件。出没が最多だった10年(353件)を上回るのは確実とみられる。7日には小松市で住民がけがをする事故も発生しており、県や各自治体が警戒を強めている。【阿部弘賢、深尾昭寛】

◇9月から急増、餌のブナ大凶作が要因か
県によると、9月11日に注意情報を出した後も出没が相次ぎ、現時点で過去の同時期と比べ最も多い。
今年の目撃件数は、5月48件▽6月82件▽7月51件▽8月22件▽9月97件――。特に9月は1日平均3・2件と急増し、1~9月の件数としては過去最多となった。9月下旬には1日平均が6・2件とさらに倍増。例年はクマが餌のブナの実を食べる10月に目撃のピークを迎えることから、県は「今後、さらに注意が必要」と呼びかける。
市町別では小松が105件で最多。金沢(82件)、白山(43件)、加賀(35件)と続いた。また宝達志水(24件)や七尾(13件)といった、これまで目撃が少なかった能登地方でも多く目撃されているのが今年の特徴だ。捕獲数も78頭と過去にないペースで増えており、人身事故も小松市で2件、金沢市で1件が起きている。
背景には、クマの生息地周辺の餌不足がある。県が餌の実のなり具合を調査したところ、主に奥山にあるブナが大凶作になっていることが主な要因とみられる。

◇県や小松市が対策強化
8日には県庁で緊急の対策会議が開かれ、各自治体の担当者らが情報を共有。関係機関が連携し、人身被害の防止を最優先に、捕獲の促進や出没時に適切な対応を取ることを確認した。クマの出没が相次いでいる小松市では緊急に助成金制度を作ったり、パトロールを強化したりして対策に取り組んでいる。
市農林水産課によると、助成金はクマの餌となる木の実の摘み取りや茂みの刈り取り作業の費用などを上限8万円で助成するもの。対象となる各町内会に10月7日付けで文書を送った。
また市と警察、消防が連携して登下校時のパトロールにも力を入れており、6日からは人員を増やして強化している。小松市教委も7日、なるべく同じ方向の子どもたちで集まり、一人での登下校を避けるなどの対策を呼びかけるガイドラインを市内の小中学校に通知した。

◇クマによる被害防止の注意点
▽住宅地や集落内の柿や栗、ハチの巣、生ゴミなど誘因物を除去する
▽クマが隠れて移動する草むらを刈り払う
▽クマの活動が活発になる早朝や夜間の外出を控える
▽外出時には人の存在を知らせる鈴やラジオを携行する
▽枝折りや爪痕、フンなどの痕跡を見つけた時は近づかない
▽林道で車から降りる際はクラクションを数回鳴らす

10/9(金) 10:24 毎日新聞
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